考える脳 考えるコンピューター

2006年8月12日(Saturday) 12:31am
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Palmを作ったJeff Hawkinsが脳の研究にシフトした(CNET Japan)ことは知っていたが、ここまで本格的に取り組んでいるとは夢にも思わず感動した。
知能のメカニズムを説明するモデルを自ら提唱し、それを全く新たなコンピュータとして実装しようとしている。
『考える脳 考えるコンピューター』
ジェフ・ホーキンス サンドラ・ブレイクスリー



誤解とは恐ろしいもので、PDAの成功で手に入れたAI(人工知能)の延長で脳を解明しようとしているのかと思っていたが、事実は逆だった。昔からJeffは脳に並々ならぬ興味を持っていて、AIやニューラルネットワークに限界を感じていた。脳の動作を適切にモデル化できていなかったからだ。
その反証デモとしてシンプルに実装されたのが後のグラフィティ(Palmの文字入力ソフト)だった。そしてPalmの成功を経て、お望みの脳研究に本格着手、ということになっている。

Jeffは一貫して「知能の本当の仕組みをきっちり解明したうえで、コンピュータに実装しようぜ」という立場をとっていたために、このような経歴になったのだ。
妙な邦題がつけられてしまったものの、この本の原題は”On Intelligence”であって、真の知能のメカニズムを明らかにしている。

この本は脳の仕組みを知らない人でも読めるように非常に分かりやすく書かれている。「そういうものか」と思うとさらっと読めてしまうのだが、実はものすごいチャレンジをしている本でもある。

そもそも脳神経科学では既に大量のデータが収集されているにもかかわらず、脳がどういうアーキテクチャで動作しているかという設計モデルが提示されていなかったという。
Jeffは過去の研究から部品を拾い集めて、この本の中で新たな情報処理モデルを提唱しているのだ。そしてそれが脳の新皮質のメカニズムであり、知能そのものであるという。

もちろん脳の解説なのだが、こういうコンピュータの設計だと思いこんで読むと、脳の実装(?)が非常に良くできていることがメカニックに分かるし、これは大筋で正しい仮説だろうという気がしてくる。
Jeffが言うとおり知能がアーキテクチャに宿っていてそのモデルが適切であるとすれば、知能の解明とそれを表現するコンピュータの開発は表裏一体で同時進行する。
現在のコンピュータは演算の繰り返しで情報を処理しているが、新皮質は実は演算はしていない。ここにコンピュータが知能を持てない壁があり、そのギャップを埋めるカギは記憶のメカニズムにあるという。

記憶が思考を大きく左右することは『インポッシブル・シンキング』でも身近な例を豊富に取り上げることで詳説されていたが、その働きはこの本の主張と良く符合している。
細胞レベルで新皮質の動作を理解することで、理解するとはどういうことか、創造性を高めるには何をすべきか、ということを根底から理解することができた。
脳のアーキテクチャを理解することで効率的に人間の能力を強化するということが可能だと実感した。

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